カテゴリー

避妊薬/ピル編・お薬ガイド


避妊薬ピルとは?


ピルとは経口避妊薬のことで、避妊を目的とした内服薬の通称です。女性ホルモン2種類が配合されているホルモン剤となっています。英語ではOC:Oral Contraceptiesと呼ばれており、低用量OCなどと表記されることもあります。


ピルの利点は、女性が自らの意思で避妊を行えるというところです。飲み忘れなく毎日内服していれば、ほぼ100%の避妊効果が得られます。ピルの内服により不妊症になる心配はありません。服用を中止すれば、個人差はありますが90%の女性で3カ月以内に排卵が再開され、通常の月経が起こることが報告されています。


ピルは元々月経痛の緩和や月経不順を改善するために開発された薬なので、避妊効果だけでなく、月経に関する症状を改善したり、月経周期を自分の予定に合わせて調整したりすることができるといった様々なメリットがあります。ピルには色々なタイプがありますが、最も一般的に使用されている低用量ピルは従来の副作用を減らした安全性の高い薬です。そのため、現在の安全な低用量ピルは多くの女性達に受け入れられ、愛用されています。基本的には飲み合わせが問題となる薬はありません。一部の抗結核薬、抗てんかん薬、HIV 治療薬などとの併用は相互作用による影響の可能性がありますので、常用薬があれば医師に相談しましょう。


適切なピルの内服は100%に近い避妊を可能にしますが、性病の予防はできませんので、ご理解の上でご使用ください。万全を期すのであればコンドームとの併用が推奨されます。


ピルが作用するメカニズム


低用量ピルには2種類の女性ホルモン、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)が含まれています。この2つの女性ホルモンが脳に作用して卵巣内の卵胞の成熟を抑制することで、卵胞ホルモン、黄体ホルモン自体の分泌も抑制されます。その結果、排卵が起こらなくなります。


ピルには他にも、子宮内膜が厚くなる機能を抑えて、受精卵が子宮に着床しにくい状態をつくる、子宮から分泌される粘液を変化させて精子が子宮へ侵入しにくくする、など避妊効果をさらに高める働きがあります。


低用量ピルの内服により身体は妊娠時と同じ状態であると錯覚することになり、排卵を促進するホルモン分泌が抑制され、結果的に次の排卵が起こらなくなります。その作用が低用量ピルの様々な効果につながるのです。


また、卵胞ホルモン(エストロゲン)は別名・美のホルモンともいわれ、美肌効果や胸に張りを与えるなど女性を美しくする作用があり、女性らしさを維持するのに不可欠なホルモンです。黄体ホルモン(プロゲステロン)は、妊娠時に大きな役割があり、保湿量を管理する作用があります。低用量ピルは女性にとって重要な2種類の女性ホルモンをバランスよく保つことで、女性の心身を健全に維持するという、女性の強い味方でもあります。


低容量ピルの効果


低用量ピルに含まれる女性ホルモンの作用により排卵が止まることで、避妊や排卵が関与する月経のトラブルに対して効果を発揮しています。そのため、避妊薬としてではなく、その他の効果を期待してピルを内服している女性も数多く存在します。実際の効果を挙げていきましょう。


①避妊効果
ピルの最も代表的な効果です。適切な服用方法を守れば排卵が抑制され、安全に、ほぼ完全に近い避妊効果が得られます。

②月経に関するトラブルを改善
月経痛・月経困難症(頭痛やイライラ、不快感など)の緩和、月経不順の改善、月経時の出血量減少、子宮内膜症に伴う月経痛の緩和

③女性特有の疾患のリスクを下げる
子宮内膜症の治療・再発予防、卵巣がん・子宮体がんのリスク低下
(※大腸がんの予防になるという報告もあります。)

④子宮外妊娠の発生頻度が低下

⑤ニキビ・肌荒れや多毛症の改善
一部ニキビが増えると報告のあるピルもありますが、ニキビや多毛症を改善します。

⑥月経周期のコントロール
ピル内服の主たる目的ではないかもしれませんが、ピル内服により月経が止まり、内服を一時中止すると月経が再開するという作用により、自分の生活や予定に合わせた月経周期、月経開始日の調整が可能となります。元々の体質も関係するので月経周期のコントロールは100%予定通りにいくとは限りません。


低容量ピルのタイプ


配合成分やホルモン量の変化、1シートあたりの錠剤数によって大きく3つに分類ができます。

  • 配合されているプロゲステロンの成分による分類
  • 1周期(28日間)でのホルモン量の変化による分類
  • 1シートあたりの錠剤数と飲み方による分類

・配合されているプロゲステロンの成分による分類

①第1世代
黄体ホルモンのノルエチステロンが配合されており、プロゲステロンの含有量が多いことが特徴です。アンドロゲン作用が少ないことがメリットとして挙げられます。

②第2世代
黄体ホルモンのレボノルゲストレルが配合されています。より少ないホルモン量で効果を得られるよう改良されています。しかしアンドロゲン作用による男性化症状が発生してしまうというリスクがあります。

③第3世代
第2世代からアンドロゲン作用が少なくなるように改良されたものです。黄体ホルモンのデソゲストレルなどが配合されています。


・1周期(28日間)でのホルモン量の変化による分類

①一相性
21錠全てに同じ成分が含まれているので、どの錠剤を服用しても黄体ホルモンと卵胞ホルモンの量とバランスは変わりません。そのため月経開始日の調整がしやすく、飲み間違いが少ないというメリットがあります。

②二相性
服用する錠剤によりホルモン量が2段階に変化しますが、日本国内で認可されているものはなく、あまり一般的ではありません。

③三相性
1周期の間にホルモンの量が3段階に変化します。黄体ホルモンが徐々に増加しているため、ホルモンの変化がより自然に近い形になっています。総ホルモン量が少ない、不正出血が起こりにくいというメリットがあります。錠剤によりホルモン配合量が異なるので、決められた順番での内服が必要です。


・1シートあたりの錠剤数と飲み方による分類

同じ種類のピルでも錠剤数が異なるタイプがあります。(トリキュラーノベロンなど)同じ薬剤であれば、摂取する成分やホルモンの量に違いはありません。

①21錠タイプ
シートに入っている全ての錠剤に成分が含まれています。1シート全て、21日間の内服が終わったら7日間は休薬して、その後新しいシートの内服を開始します。休薬期間中には月経に似た出血(消退出血)が起こります。

②28錠タイプ
シートには成分が含まれている21錠と成分の含まれない偽薬7錠が入っています。1シートの最後の7日間に内服する錠剤には薬の成分が入っていないため、実質的な休薬と同じことになり、消退出血が起こります。休薬による飲み忘れを防ぎたい場合や初めてピルを飲み始める人には、毎日の服用が習慣づけられる28錠タイプをおすすめします。


低容量ピルの服用方法


・飲み方
大前提として、ピルは女性の月経周期に合わせ、21日間のんで7日間休むという28日周期が基本であることを忘れないようにしてください。
特に指定はありませんが、1日1回同じ時間に1錠を内服するようにしましょう。起きた直後や就寝前など、日々の生活リズムに取り入れて習慣づけることで、飲み忘れが防ぎやすくなります。
水かぬるま湯での服用が推奨されますが、お茶やジュース類でも問題はありません。ただしグレープフルーツジュースはピルの作用を増強し副作用が起こりやすくなる可能性があるため避けた方がよいでしょう。


・内服開始時期
妊娠中以外はいつからでも内服を開始することができます。
避妊や月経開始日の調整が目的の場合には内服開始日に気を付けましょう。避妊目的での服用では、月経開始初日からピルを内服することでその日から避妊効果が得られます。初日でなくても月経開始から5日以内であれば他の避妊方法は必要ないとされています。ただし月経開始から6日以上経ってからでは、避妊方法を追加する、7日間は性行為を避けるなどの対応が必要となります。
授乳しておらず血栓症のリスクが低い方は、産後21日以降ピルの内服が可能です。授乳している場合には産後6カ月以降に開始するようにしてください。


・内服可能な年齢
原則としては初潮後の女性であれば内服が可能です。ただしピルが骨の成長に影響する可能性が否定できないので、成長過程(15歳前後まで)の女性の内服は推奨されません。
閉経までピル内服の継続が可能ですが、40歳以上では他の持病の有無を確認することが必要です。35歳以上で1日15本以上の喫煙者は血栓症のリスクが非常に高いため、ピルの内服が不可能です。
閉経後の更年期では、ピルの内服ではなく別のホルモン補充療法に切り替わります。


・飲み忘れの対処法
1錠だけの場合、気付いた時点で飲み忘れた錠剤を服用して、残りは予定どおりに服用していきます。つまり、その日だけは1日2錠内服することになります。
2錠以上飲み忘れた場合には、一度内服を中止しましょう。数日以内に消退出血が起こるはずですので、月経が始まったら新しいシートの1錠目から服用を開始してください。
28錠タイプの偽薬を飲み忘れても、成分が含まれていないため問題はありません。ですが日数がずれて間違えないためにも飲み忘れた錠剤は捨てましょう。



低容量ピルの副作用について


ピルに含まれているのは元々体内に存在しているホルモンです。低用量ピルに含まれる成分の量はごくわずかなので、大きな副作用は起こりにくく、安全な薬といえるでしょう。


内服開始からしばらくの間は、頭痛、吐き気、乳房の張り、下腹部痛、不正出血など小さな副作用が認められることがあります。ピルの服用により身体が妊娠しているのと同じような状態になるためで、2周期ほどで身体が慣れてくると、症状は自然に軽くなるか感じなくなります。ピルを飲むと太る、といわれることがありますが、低用量ピルが体重増加に直接関与しているという報告はありません。妊娠と同様の状態による食欲亢進が原因とも考えられています。


従来のホルモン量が多いピルでは心筋梗塞など重篤な血栓症の副作用や乳がんのリスクが指摘されていましたが現在使用されている低用量ピルでは大きな副作用が激減しました。このように比較的安全な薬である低用量ピルですが、副作用に注意しなければならない場合もあります。


最も重い副作用である血栓症は、年齢と喫煙がリスクとなります。激しい頭痛・胸痛・腹痛、息苦しさ、押し潰されるような胸の痛み、視界の変化、舌のもつれ、下肢の痛みやむくみ・腫れや赤み、失神や意識障害、けいれん、長期にわたる不正出血などがみられたら、医療機関を受診してください。症状は血栓症特有のものとは限らないため、受診の際にはピルを内服していることを医師に伝えるようにしましょう。


※低用量ピルを内服してはいけない方(詳しくは医師に相談してみましょう。)
エストロゲン依存性悪性腫瘍、子宮頸がん(疑い含む)、中等度以上の高血圧、血管病変を伴う糖尿病、妊娠(可能性含む)、妊娠中の黄疸や妊娠ヘルペスの既往、大手術の前後、長期安静中、合併症のある心臓疾患、前駆症状のある片頭痛、重い肝機能障害、乳がん、耳硬化症、脂質代謝異常、抗リン脂質抗症候群、血液に関する病気や狭心症・心筋梗塞・脳卒中(既往含む)、原因のわからない異常性器出血など


アフターピルの効果・服用方法・副作用


モーニングアフターピル、緊急避妊薬、事後避妊薬、Plan Bなどとも呼ばれ、欧米では広く知られ使用されています。低用量ピルの長期の見忘れやコンドームが破れてしまった、など予測できなかった避妊失敗に際して、望まない妊娠を回避するために性行為後に使用する緊急避妊ピルです。


作用が穏やかな低用量ピルとは異なり、アフターピルは中容量または高容量のピルで急激にホルモンバランスを変化させることで排卵を抑制し、タイミングを遅らせることで受精を防ぎ妊娠を回避します。数種類のデータがあるのですが、アフターピルによる避妊成功率は93%以上ともいわれ、適正な服用方法であれば99%という報告もあります。


服用開始が早ければ早いほど効果が期待でき、避妊成功率が上がります。アフターピルは中絶とは異なるため、着床してしまってからの服用は効果がありません。避妊に失敗した時点から72時間(3日)以内に1錠を内服、さらにその12時間後にもう一度服用する方法や72時間以内に2錠内服するタイプが現在の主流(アイピルボスティノールなど)となっています。


アフターピル服用後3日〜3週間ほどで消退出血が起こるかどうかが避妊成功のひとつの判断材料となります。出血がみられても妊娠による着床出血の可能性もありますが、こちらは消退出血と比べてごく少量で色も茶色がかったものです。服用後3週間以上経っても消退出血がみられない場合には妊娠の可能性がありますので、市販の検査薬や病院の受診で確認しましょう。


アフターピルは低用量ピルよりも女性ホルモンが高濃度なため、吐き気・嘔吐、胃の不快感、頭痛などの副作用の可能性があります。長くても24時間以内で緩和することがほとんどです。非常事態で大変頼りになる薬ですが、アフターピルはあくまでも緊急の避妊法であり、最後の手段だということをよく認識しておいてください。