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痛風編・症状とお薬ガイド


痛風とは?

痛風とは、体内の尿酸が増えて高尿酸血症となり、尿酸結晶塩が組織に沈着する病気です。

古くからある病気で、ルイ14世やニュートンなど歴史上の人物たちも痛風を患っていたという史実があります。しかし、日本においては、独自の食文化ゆえか明治時代以前に痛風患者はいなかったといわれています。食生活の欧米化、生活習慣の乱れが進むにつれて、 日本でも徐々に増加していき、2000年代に約87万人となりました。その後は緩やかな減少あるいはほぼ横ばいの状態を維持しており、現在では痛風患者は約60〜70万人、痛風予備軍の高尿酸血症の人は約600〜650万人と推定されています。

主な症状は、尿酸が関節の中で固まって結晶になって引き起こされる関節炎で、突然起こるため痛風発作とよばれています。血清尿酸値7.0mg/dl以上の高尿酸血症が持続して、痛風関節炎を起こすと痛風と診断されます。高尿酸血症は肥満、高血圧、 糖尿病などの糖代謝異常、高脂血症などの脂質代謝異常などを合併する確率が高いことから、メタボリック症候群との関係も深く、心血管疾患の予測因子やリスク因子としても注目されています。

血液中の尿酸値は、性ホルモンの関係で女性よりも男性の方が高いので、痛風になるのはほとんどが男性です。尿酸値が高いほど痛風は起こりやすくなりますが、尿酸値の高い人全員が痛風発作を起こすわけではありません。 女性の場合は血清尿酸値が7.0mg/dl以下であっても上昇に伴ってメタボリック症候群など他の合併症が増加しやすくなるため、血清尿酸値5.5mg/dlを超えたあたりから注意が必要です。

治療としては、高尿酸血症に関連する生活指導が行われます。薬物療法は2種類の尿酸降下薬が使用されます。ベンズブロマロン(ユリノーム)などの尿酸排泄促進薬と、アロプリノール(ザイロリック)などの尿酸生成抑制薬があり、高尿酸血症のタイプによって使い分けます。 関節炎に対して、痛風発作の予感時や発作時にも薬物療法が行われます。高血圧や高脂血症を合併している場合には、尿酸値を上昇させるため併用を避ける必要のある薬もあります。尿酸降下薬は体質を改善させるわけではないので、服用を中止すると尿酸値は元のレベルに戻ってしまいます。

痛風の治療・予防のためには、尿酸を増やさないための食事や運動など生活習慣の見直しが何よりも重要と考えられています。


痛風の原因

痛風を起こす高尿酸血症は、体内の尿酸の産生と排泄のバランスが崩れ、血清尿酸値が上昇することが原因となります。尿酸はプリン体という物質の最終産物で、肝臓で生成され、腎臓から排泄されます。プリン体は、細胞の核酸(DNA、RNA)に存在しているので、ほとんどすべての食品に含まれている、 生きていく上で欠かせないエネルギー源です。体内にあるプリン体のうち、食品として体外から取り込まれたものは20〜30%で、大半は体内でつくられています。通常の場合、新陳代謝に伴う老廃物として1日に約600〜700mgの尿酸がつくられますが、尿や汗、便としてほぼ同量が排泄されるため、 尿酸の量が一定に維持される仕組みになっています。尿酸が過剰に産生されたり、排泄が低下したり、あるいは両方が起こったりすると、バランスが維持できなくなり体内の尿酸が増え、血液中に溶けきれないほどになって蓄積してしまいます。余った尿酸が結晶化して関節に沈着すると痛風(痛風性関節炎)、 腎臓や尿路にたまると腎臓障害(痛風腎)や尿路結石になります。暴飲暴食や激しい運動、ケガ、ストレスなどをきっかけに、沈着した尿酸結晶塩が関節腔(関節と関節の間)はがれ落ちてしまうと、免疫機能が働いて、白血球が尿酸血症を異物とみなし、排除するために攻撃します。その結果、 関節に炎症が起きて激しい痛みを感じるのが痛風発作です。高尿酸血症の基準が7.0mg/dl以上と設定されている理由は、尿酸が血液に溶けきれる限界値だからです。

尿酸値が上がる要因

①肥満

大食いや早食い、不規則な食事、甘い食べ物や飲み物など肥満をまねくような食生活は、尿酸値を上げる要因となります。また、魚卵、レバー、干物などプリン体の多く含まれる食品の過剰摂取も同様に尿酸値を上昇させます。

②アルコール

プリン体が多い=ビールというイメージがあるかもしれません。しかしビールに限らず、アルコールの代謝により尿酸が合成されてしまいます。アルコール自体にも尿酸の排泄を低下させる作用があるため、アルコールの過剰摂取は尿酸値の上昇をまねきます。

③ストレス

ストレスによる自律神経や免疫機能、ホルモンバランスの乱れは、腎臓からの尿酸排泄を低下させる要因になると考えられています。また、ストレス解消のために暴飲暴食をしてしまうと、尿酸値を上昇させることになります。

④激しい運動

激しい運動の結果、疲労物質の乳酸が体内に蓄積されます。乳酸が溜まると尿酸の排泄が低下し、尿酸値が上昇します。

⑤遺伝的要因:痛風の家族歴は高尿酸血症のリスクのひとつと考えられています。

⑥薬の副作用:一部の降圧薬や利尿薬、腎臓の薬には尿酸を上昇させる副作用があります。

⑦他の疾患の合併症:多発性骨髄炎、悪性リンパ腫、白血病、悪性貧血など


痛風の症状

①前兆症状

初めての痛風発作は突然起こることが多いようです。しかし、一度発作を経験すると、発作の約6〜12時間前に、 関節がピリピリ・チクチク・ムズムズする感じや、どこかにぶつけたような鈍い痛みや圧迫感、熱感などの違和感を覚える場合が多いといわれています。これを痛風の前兆症状といい、発作を多く経験している人ほど感じやすくなるようです。

②痛風発作

病名の由来ともなった“風が吹くだけでも痛む”ほど、発作時 は激烈な痛みに襲われ、病変部の腫れ、発赤、熱感、ときには痛みによる歩行困難も伴います。痛風発作は通常、24時間以内にピークとなり、3~4日かけて徐々に改善していき、 7~10日で自然におさまります。ただし、適切な治療を受けずに放置しておくと、発作を繰り返し、だんだんと症状が悪化していきます。また、当初は年1〜2回程度だった発作の間隔が短くなっていき、慢性の関節炎へと移行します。

痛風発作の90%が下肢で起こり、足の親指 のつけ根に最も多く認められます。他に足首(アキレス腱の周り)、くるぶし、かかと、足の甲、膝などに起こることもあり、通常はひとつの部位だけが痛むのが特徴です。

③痛風性関節炎

診断の基準として、2回以上の痛風発作の既往、1ヶ所の関節炎、関節の発赤、足の親指のつけ根の痛みまたは腫れ、片足の親指のつけ根の病変、片側の足関節の病変、痛風結節の存在、血清尿酸値の上昇、レントゲン上で非対称性の腫れ、 発作は完全におさまる、という9項目のうち6項目以上を満たしたものが痛風性関節炎とされます。症状が進行すれば、関節軟骨にも炎症がおよび、骨に欠損が生じ、関節の変形や機能障害が残ることもあります。

④痛風結節

痛風発作が起きてもそのまま数年〜10年ほど放置しておくと、尿酸は増え続け、皮下で尿酸結晶が大きくなってコブのように膨らむことがあり、これを痛風結節といいます。下肢以外に耳や肘にもできることがあり、破れると皮膚潰瘍が生じます。 痛風結節そのものは触れても痛みはありませんが、徐々に大きくなると、関節の変形や脱臼を引き起こし、日常生活に支障をきたすことがあります。

⑤痛風腎、尿路結石

尿酸の排泄を行う腎臓に尿酸結晶が沈着すると、腎機能が低下していきます。それにより尿酸を排泄する働きも低下して、さらに尿酸結晶が腎臓に沈着しやすくなるという悪循環が起こります。これが痛風腎です。腎機能低下が進行すると、 人工透析を必要とする腎不全などの深刻な状態に至ることもあります。尿路結石は、痛風の約20%で認められるといわれています。腎臓にできた尿酸結晶が大きくなって結石となり、尿管に流れ出て途中で引っかかってしまったもので、激しい痛みや血尿が起こることがあります。

⑥その他の合併症

肥満、高血圧、高脂血症などの脂質代謝異常、耐糖能異常や糖尿病などの糖代謝異常といった生活習慣病が多いのが特徴で、メタボリック症候群とも深く関連しています。これらの合併症は動脈硬化と原因になり、脳の血管で起こると脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、 心臓の血管に起こると狭心症や心筋梗塞などの心血管障害(虚血性心疾患)になり、命に関わる状態になります。痛風でない人にも起こる病気ですが、痛風患者・高尿酸血症の人ほど起きやすいといわれているため、注意する必要があります。


痛風の治療法

痛風の治療は、痛風関節炎の治療と、原因となる高尿酸血症の治療の2つに大別されます。

□痛風関節炎の治療(薬物療法)

急性あるいは慢性の炎症を消退させることを目的とします。

①発作の前兆症状時

発作の前兆症状が起きたときにはコルヒチン内服により未然に発作を予防・軽減することができます。コルヒチンは、白血球が尿酸結晶を異物とみなして攻撃することによって起こる炎症反応を抑え、症状を緩和させます。ただし、発作が起きてからの内服は効果がないこと、 症状を抑えるだけで根本的な治療ではないことを理解する必要があります。コルヒチンの痛風発作予防を期待して常用してしまうと、吐き気や下痢、胃腸障害などの副作用が起こる可能性がありますので、前兆症状を感じたときに1錠だけ使用します。

②発作時

痛風発作時には、病変部の関節を安静に保ち、炎症や痛みを抑えるために非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬や坐薬などを使用します。即効性が必要とされるため、血中濃度の上昇が速く、血中半減期が短い(体内に残存する時間が短い)タイプを選択します。症状が強い場合や、 腎機能障害や胃潰瘍などの消化管障害がありNSAIDsが使用できない場合には、副腎皮質ステロイド薬の内服または関節内注射を行うこともあります。発作時に尿酸降下薬を内服すると、尿酸値が変動して関節炎を悪化させる可能性があるため、2~4週後から服用します。

③非発作時

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を使用することもありますが、発作の残存や関節炎による痛みがなければ中止します。

□高尿酸血症の治療

痛風関節炎の慢性化や発作の抑制、高尿酸血症に伴う痛風腎や尿路結石を予防する目的です。

①生活指導

生活習慣の改善は薬物治療とともに痛風の治療においてとても重要です。肥満の防止や改善のため、1日に摂取する適正なエネルギー量摂取を守ることにくわえ、塩分控えめで栄養バランスの取れた食生活を心がけ、アルコー ル類・果糖・プリン体の過剰摂取に注意します。 コーヒーや乳製品、ビタミンCの摂取は痛風の発症を抑制する作用があり、プリン体を多く含む野菜や高タンパク食は痛風発 症には影響しないとされています。

尿酸は腎臓から排泄されるので、水分を多量に摂取し1日の尿量を2L以上にすることが推奨されますが、心血管障害や腎障害がある場合には注意が必要です。

激しい運動(無酸素運動)は血清尿酸値を上昇させる原因となるため、個人の運動能力を上回る運動、過度の筋肉強化運動や瞬発力を要する運動は、高尿酸血症の治療という面においては望ましくありません。

②薬物療法

痛風発作がないときには尿酸降下薬による薬物療法を行います。尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬の2種類があります。尿酸排泄促進薬にはベンズプロマロン(ユリノーム)、プロベネシド(ベネシッド)などがあり、腎臓で行われる尿酸の再吸収を抑制することで、尿酸の排泄を促進するため、 尿酸の排泄が低下しているタイプの高尿酸血症に対して使用します。尿酸生成抑制薬にはアロプリノール(ザイロリック)、フェブキソスタット(フェブリク)があり、プリン体が尿酸に分解されるときに必要な酵素の働きを阻害する作用により尿酸の産生を抑えるため、 尿酸の産生が過剰なタイプの高尿酸血症に対して使用します。腎障害、尿路結石を合併している場合には尿酸生成抑制薬が第一選択となります。

血清尿酸値6.0mg/dl以下を目標として、少量から開始して維持します。尿酸降下薬は長期間の内服が必要となります。尿酸値が目標値以下になっても、自己判断で内服を中止したり、用量を変えたりすると、尿酸値が不安定となり、発作再発のリスクが高まるだけでなく、 腎障害を悪化させる可能性があります。

痛風患者は酸性尿のことが多く、腎障害や尿路結石のリスクを増加させるため、尿酸排泄促進薬を内服する場合には、尿をアルカリ化する目的で、重曹やウラリットを内服します。

痛風発作中に尿酸降下薬を開始したり、尿酸降下薬内服中に痛風発作が起きたりした場合、関節炎が悪化、長期化することがあります。急激に尿酸値が下がることによって関節内の尿酸結晶が関節腔内にはがれ落ちやすくなることが原因と考えられています。そのため、 原則的に発作中は血清尿酸値を変動させる尿酸降下薬の開始や増量を行わず、痛風発作が消失して2〜4週間後くらいから少量を開始し、尿酸値をみながら徐々に増量していきます。


痛風の予防

痛風の予防には、尿酸値をコントロールして高尿酸血症を防ぐことが重要です。尿酸値の上昇を防ぎ、尿酸結晶をつくらないことを目的とした生活習慣の見直し・改善をおすすめします。

□食事

①食べすぎによる肥満を防ぐ

常に食べすぎないように心がけ、肥満を予防・解消するようにしましょう。早食い、ながら食い、不規則な食生活なども肥満の原因になるため、1日3食を規則正しく食べることが大切です。

②プリン体の多く含む食品を控える

尿酸はプリン体から産生されるので、プリン体を多く含む食品を続けてたくさん食べないようにしましょう。プリン体は、ほぼすべての食品に含まれていますが、特に、魚肉の内臓や干物、魚介類(エビ、かつお、 いわし)など細胞の数が多いもの、細胞分裂が盛んな部分、旨み成分が多いものに豊富に含まれます。

③アルカリ性の食品を摂取する

尿酸はアルカリ性の水分によく溶けるので、野菜やきのこ、海藻類など、尿をアルカリ化する食品を積極的に摂取しましょう。肉や魚介類は尿を酸性化するので、控えるようにします。

④過度の飲酒を控える

アルコールは、尿酸の産生を促進するとともに、腎臓からの尿酸の排泄を抑制してしまいます。尿酸結晶を防ぐには、禁酒がベストです。難しいようであれば、ゆっくり飲んだり、水やお湯で割って飲んだりして、適量を守るようにしましょう。

⑤水分を多く摂取する

尿酸の多くは尿に混じって排泄されるため、水分をたくさん摂取して尿量を増やすことで尿酸値を下げることができます。水分は1日1.5Lを目標にしましょう。ただし、ジュースなど糖分の多いものやアルコールでは逆効果になるので、 水やお茶類など糖分を含まずカロリーゼロの飲み物で水分補給をしましょう。一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度をこまめにとることが推奨されます。

□運動

適度な運動は、肥満を解消し、尿酸値の低下につながります。無理なく続けられるウォーキングやサイクリング、水泳などの有酸素運動を習慣化しましょう。毎日行うのが理想的ですが、難しいようであれば、1日15分程度の運動を週に3回以上することから始めてみましょう。 ただし、ウエイトトレーニングや短距離走、サッカーやテニスなどのような激しい無酸素運動は、乳酸の蓄積により尿酸値を上昇させてしまいます。

□ストレス

痛風になりやすいのは、野心家、競争心・責任感・自己主張が強い、機敏でせっかち、イライラしやすい、真面目で几帳面などストレスを感じやすい性格の人だといわれています。それも個性ですので性格を変える必要はありませんが、ストレスが溜まりやすい人は、物事を楽天的に考え、 自分なりの方法でリラックスしてストレスを発散するようにしましょう。ただし、暴飲暴食でのストレス発散は逆効果ですので、身体に負担をかけない方法にしてください。